給料の全額差押えについて
今回のテーマは、給料の全額差押えについてです。
例えば、消費者金融からお金を借りたのはいいけれど、今月から支払っていくことができないという場合に、毎月の給料が差押えされてしまうというようなことはあるのでしょうか(お金を借りる際に公正証書を作成しているとします)?
結論から申し上げますと、日常的な生活費については法律で差し押さえることが禁止されています。
なので、給料の全額を差し押さえることはできません。
具体例のような借金についての差押えの場合は、以下のいずれか少ない方の金額が差押えをしてはいけない金額になっています。
■月33万円
■給与の4分の3
もう少し具体的な金額でご説明しますと、例えば給与が20万円でしたら、
■月33万円
■20万円×3/4=15万円
では、15万円が少ない方ですから、消費者金融は15万円については差押えができないということになります。
ちなみに、すでに給料が差し押さえられてしまって、生活が苦しいというような場合には、裁判所に差押できない金額を増やしてもらうこともできます。
この場合は、給与の差押え自体が取り消されることもありますので検討してみるのもよいかもしれません。ただし、具体例の場合のように公正証書によって差押えがされると少々やっかいになってきます。
公正証書による差押えの場合は、消費者金融が直接あなたの会社にきてお金を取り立てることができるからです。
なので、そのようなことになる前に、弁護士さんにお願いして交渉をはじめるのがよいと思われます。
では、ここで公正証書について少し補足しておきましょう。
金銭消費貸借契約の際に作る公正証書というのは、おそらくほとんどが執行証書です。執行証書というのは裁判所の判決などを待たなくても、すぐに強制執行できてしまうものです。
従いまして、貸金業者としては公正証書を作成するのは定石といえるやり方なのです。とはいえ、すべての場合に、この執行証書による差押えが認められているわけではありません。
判例では、弁護士から債務整理の受任通知を受けて、強力の依頼を受けたのにもかかわらず給与を差し押さえた貸金業者に、慰謝料と弁護士費用の損害賠償請求が認めらたケースもあるからです。
ちなみに、このケースの場合は、お金を返すほうの支払状況がそれほど悪くなくて※、ほとんど通常の返済を誠実に行ってきた実績があったからなのですが。
※支払いの遅れが1〜3日のものが数回程度で、支払いを怠ったのは1回だけという場合です。
他方、貸金業規制法では、貸金業を営む者は、「貸付の契約に基づく債権の取立てをするに当たっては、人を威迫し、又は〜人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動により、その者を困惑させてはなら」ないとされています。
また、金融庁の事務ガイドラインでは以前から、「債務処理に関する権限を弁護士に委任した旨の通知、または、調停、破産その他裁判手続をとったことの通知を受けた後に、正当な理由なく支払請求をすること」を禁止しています。 |